◆”出国税”について

 平成27年度税制改正により、2015年7月1日以降に国外に転出する際に対象となる資産を1億円以上保有している一定の居住者は転出の時点で課税されることとなりました。これは国外転出時課税制度といい、2019年1月7日から適用されることとなった国際観光旅客税の別名である出国税とは異なるものです。

◆国際観光旅行税(別名:出国税)とは

 国際観光旅客税が日本人や外国人の両方を対象として日本を出国する際に1回につき1000円課される制度です。

◆国外転出時課税制度とは

国外転出時課税制度は一定の居住者が日本から出国する際に、国内に有している有価証券等について、国外転出時に一旦その有価証券を売却したものとみなしてその利益に対して課税をするという制度になります。

◆制度制定背景

 日本においては有価証券に関する売却益には基本的に20%などの所定の税率で課税されることとなりますが、香港やシンガポールなど、キャピタルゲインに対して全く課税されない国も存在します。ここに目をつけた日本の富裕層は、国外に転出したうえで、日本の居住者に該当しなくなったタイミングでその保有する有価証券を売却することにより、本来ならば日本で課されていた税金を逃れるという事例が多く生じていました。ここにブレーキをかけるべく設けられたのが国外転出時課税制度になります。

 キャピタルゲインに対して課税されない国に転出したうえで有価証券を売却するのは個人の自由ですが、日本で持っていた有価証券等については日本にて納税すべきという考えに基づいた制度になります。これは国外に居住する親族等へ有価証券等を贈与する場合にも適用されてしまいます。

◆国外転出時課税制度の対象となる要件

①    所有等している対象資産の価額の合計が1億円以上であること

②    原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること

そしてその対象となる資産は、有価証券(株式、投資信託等)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引になります。

◆従業員が海外赴任する際に留意するポイント

 一般の社員が海外赴任をする時点で1億円以上の有価証券等を保有しているというケースは稀だとは思いますが、高給のベテラン社員や、ストック・オプションを多く付与された社員などは課税の対象となってしまう可能性があるため、海外赴任時に確認することが望まれます。

 課税の対象となってしまった場合には確定申告をすることにより出国前に納税する必要がありますが、予め期間を定めて一時的に海外に居住することとなる場合には、納税の猶予措置が設けられています。その要件は以下のとおりです。

①    国外転出時までに納税管理人の届出をすること

②    確定申告期限までに確定申告書の提出をすること

③    納税猶予分の所得税及び利子税の額に相当する担保を提供すること